自家焙煎コーヒーを家庭用コンロで
ブラジルコーヒーとの出会いがきっかけで
去年、サイクリングで群馬県大泉町(ブラジル人の方が多く住んでいる所です)へ行った時、とあるスーパーでコーヒーの試飲をすすめられたので飲んでみました。ムンドノーボという豆でしたが、甘いチョコレートのような香りでとても美味しかったので、1袋買って帰りました。家で淹れても美味しくて、しばし至福の時を過ごしていたのですが、あっという間に飲み切ってしまいました。
群馬県は家からちょっと遠いので、そんなに頻繁に買い出しに行けるわけでもなく、近所の店や通販で、ブラジルのコーヒー豆を扱っているところを幾度となく探して買ってみたのですが、同じくらい美味しい豆には出会えることができませんでした。
美味しいコーヒーをいつでも安く飲みたい
でもその過程で、色んな国にそれぞれ美味しいコーヒー豆があることを知りました。
そして、自分で生豆から焙煎するとコストが抑えられるし、生豆は焙煎した豆よりも保存がきくので、生豆を買って、自宅で飲みきれる量をその都度焙煎したら、いつも美味しい状態のコーヒーが飲めるという事もわかってきました。
もちろん、プロの方の焙煎には敵いませんが、10日以上経ったプロの焙煎豆より、自宅で煎った10日以内の豆のほうが、美味しいことは確かです。
最初に銀杏を炒るような網でやってみたら、ムラはあるもののそこそこ美味しく仕上がったので、もう少し安定して煎れて、コストがそれほどかからないものという条件で探していたら、アウベルクラフトの遠赤コーヒー焙煎キットというものを見つけました。
販売元の公式ページの他、ブログやYouTubeなどでも多く取り上げられているので、検索すれば関連記事がすぐに見つかると思います。
焙煎にカセットコンロって、使いづらくない?
家庭用コンロは加熱防止センサーが働いてしまうので、コーヒーの焙煎にはカセットコンロを使用する方が多いと思います。
でも、うちでは「加熱防止センサー対応五徳」というものを使用して、通常のコンロで焙煎しています。
カセットコンロが使いづらいと感じ始めた時、この五徳を使用して焙煎する方法を探したのですが、見つかりませんでした。
その後、自分でいろいろと試行錯誤し、ようやく美味しく煎ることができるようになってきたので、少し説明が長くなりますが、記事にしたいと思いました。興味のある方は読んでみてください。
カセットコンロで問題がないという方は、販売元の公式ページで焙煎手順が詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。
私が使っている器具
遠赤コーヒー焙煎キット
私が使っているのはLタイプで200gまで焙煎できるものですが、現在は2〜3種類の豆を100gずつ焙煎して早めに飲み切る、というやり方に落ち着いているので、スタンダードの100gでも良かったかもしれません。
網目のサイズは2.5mmと5mmがあり、本体を買う時にオプションで追加したので両方のサイズを持っています。でも、5mmは小さい豆が隙間から溢れてしまうので、あまり使用しなくなりました(大きい豆が好みという方は5mmでも良いかもしれませんね)。
5mmの利点としては、カゴの中の豆が見やすいことと、チャフ(薄皮)が焙煎中に外に出るので、焙煎後の豆から除去する必要がないとのことでしたが、2.5mmでも結構チャフは出ますし、残ったチャフもうちわで扇ぐときにシンクに落ちるのであまり手間はかかりません。
豆の様子は2.5mmでも問題なく見えます。生豆からミディアムあたりまでは豆の色の変化は分かりやすいですが、それよりも深煎りへ進む場合、煙が出て見えにくくなったり、焙煎後に色が濃くなったりすることもありますので、どちらの網でも、色より時間管理を気にする必要があると思います(サンプルロースターのように中の豆を一部取り出せたら、その色で確認することもできるのですが)。
コンロにセンサー対応五徳
通常のガスコンロは加熱防止センサーが付いており、煎っている途中で加熱が進んで弱火になってしまうため、カセットコンロの使用が推奨されています。
私もしばらくカセットコンロを使用していたのですが、寒い時期やボンベのガスが残り少ない時には、火力が極端に弱くなってしまいます。その結果、必要以上に煎る時間がかかって焦げ臭い仕上がりになったりする、ということがしばしばありました。
中央に水を入れて加熱防止センサーの反応を止めるという五徳を見つけ、使ってみたらとても具合が良かったので、今はキッチンのコンロで煎るようにしています。
最初、水蒸気が豆に当たると良くないのかもと心配していましたが、煎り上がった豆はカラリとしていて、特に湿気はありません。
水分が豆に与える影響について
手網で焙煎する方の中には、豆の雑味やチャフを取るために、焙煎前に豆を水やお湯で軽く洗うという人もいるのですが、洗った後に豆を乾かして煎る派と、あまり乾かさないまま煎る派に分かれているようです。
後者の場合、水分で豆の繊維が緩み、煎り上がった豆が大きくなるというので、私もやってみたのですが、たしかにふっくらと大きな焙煎豆に仕上がりました。
センサー対応五徳から蒸発する水分は、洗った豆のものより少ないですが、多少膨らみを助けるようで、カセットコンロで煎ったものよりも、少しふっくらとしているような気がします。
換気について
室内で焙煎するので、部屋の窓を全開にして換気扇を回していますが、当日中はどうしても臭いが残ります。グリルで魚を焼いた時もそれくらいは残るので、まぁ気にしないようにしています。
部屋の窓が少なかったり、換気扇が小さくて換気があまり良くないという場合は、庭やベランダでカセットコンロを使用した方が良いかもしれません(風が吹くと火力が極端に弱くなりますので、風よけも忘れずに)。
その他に必要なもの
- 角ザル
豆の計量や冷却用。 - 軍手
やけど防止に。 - うちわ
焙煎後の豆を冷ますため(下敷きやプラ板などでも代用可。ドライヤーの冷風でもOK)。 - キッチンタイマー
写真にはありませんが、焙煎時間を計るのに使用します。 - やっとこ
詳細は下記の「5. 五徳の皿に湯を追加」をごらんください。
焙煎の手順
1. コーヒー豆の計量
豆を計量し、形や色の悪い豆を取り除きます。角ザルでも良いですが、ホーローバットがあれば、底が白くて豆の選別がしやすいのでおすすめです。
2. 焙煎カゴの組付けを確認し、豆を投入
カゴの組み立て方ですが、ハンドルを右上、蓋を左上、ネジを緩めると蓋が下に回転しながら落下して蓋が開くようにセットすると、焙煎後に豆を取り出す作業がすばやく出来ます(豆をすぐに冷却しないと、余熱で焙煎が思った以上に進んでしまうので)。
あと、なぜかハンドルの付け根のネジが緩んでいると、蓋のネジも空回りしてしまい、肝心な時に蓋が開かないという事があるので、火にかける前にしっかりと増し締めをしておきましょう。
豆の投入は、通常の漏斗だと穴が小さく、豆が引っかかってなかなか入らないため、大きめのものがあると便利です。もちろん手で入れてもいいですし、ハガキをラッパ状に丸めたものでも代用できます。
3. コンロにセットして焙煎開始
ガス台の上は、焙煎中にチャフが大量に飛んで汚れるため、必要のないコンロは五徳を外してボールをかぶせたり、グリルの排気口にカバーをかけるなどしておくと、後の掃除が楽です。
コーヒー用の細口のケトルに湯を沸かしておきます(五徳の皿の水が減ってきた時に追加します)。
五徳の皿に湯を入れ、焙煎器の土台を載せて中火にかけます。皿の水が完全に沸騰したら火をやや弱めます。うちのコンロでは、レバーを「右から2/5」の位置(自動調理でご飯を炊くマークがあるところ)にしていますが、お使いのコンロによって調整してください。
私の家は、災害対策のためにプロパンを使用しているのですが(停電時に電力の供給が止まると、都市ガスは使用できないので)、『コーヒー「こつ」の科学』という本によると、プロパンは都市ガスと比べて熱量が倍なのだそうです。また、都市ガスは食事の時間帯に近隣での消費量が増えると、ガスの供給が弱まる傾向があるとも書かれてありました。
なので、プロパンをお使いの方は、写真のレバーの位置は多少参考になるかもしれませんが、都市ガスの方は、もう少し強火のほうが良いのかもしれません。また、火力が弱いと感じたら、食事時間帯を外すなどの工夫をしてみてください。
注意:センサー対応五徳を使用する場合、焙煎器の土台の中に取り付けてある遠赤ネットが赤くならないため、キットの説明書にあるような「赤い部分の大きさを火加減の目安にする」ということができません。炎の高さとレバーの位置で判断するようにしてください。
4. 焙煎開始〜1ハゼ
焙煎カゴを土台に載せ、1〜2秒1回くらいの速さで回します(私は1.5秒に1回転を目標にしています)。
7〜8分くらいで1ハゼの音がし始めます。パンパンと勢いのある音が、1〜2分続きます。
1ハゼがなかなか起きない時には
気温が低かったり、窓から入る風が強かったりして、いつもの火加減なのに1ハゼが起きないという時もあります。季節によっても火加減の調整が変わるかもしれません。
うちでは、8分で1ハゼが起こらない場合、五徳の皿に湯をチェックして無くなりそうなら追加し(次の項を参照)、火を少し強めます(うちではレバーを中央に)。
9分過ぎても起きなければ、更にもう少し強めます(うちではレバーを「右から2/3」に)。
この後、大体1〜2分後に1ハゼが始まります。火が少し強いようなら、レバーを1段階戻します(元の位置が「右から2/3」なら「中央」へ、「中央」なら「右から2/5」へ)。
5. 五徳の皿に湯を追加
1ハゼの後は1〜2分くらい静かになるので、この時点で皿の湯をチェックし、少なくなっていたら追加します(上記の時間よりも弱い火加減でゆっくり焙煎する場合、1ハゼの前に五徳の水が減ってしまうので、無くなる前に適宜追加します)。
豆の種類によっては、1ハゼの直後に2ハゼが始まるものもあります。その場合湯の追加はせずに、そのまま次の工程「2ハゼ〜好みの焙煎まで」に進みます。
焙煎カゴのハンドルを持って角ザルの上へ移動し、土台のネット越しに見える五徳の皿にケトルのお湯を注ぎ足します。そして焙煎カゴを元の位置に戻し、同じように回転させ続けます。
もし台所の照明が暗くて五徳の皿がよく見えない場合は、やっとこで焙煎器の土台をつかみ、そのまま角ザルへ移動させてから、五徳の皿へお湯を注ぎ足します。
また、ケトルの注ぎ口があまり細くない場合も、湯の量の調節ができず溢れてしまうので、同じようにやっとこを使用してください。
6. 2ハゼ〜好みの焙煎まで
1ハゼが終了して1〜2分したら、2ハゼが始まります。
季節によっては、五徳の皿に水を追加する際に、焙煎カゴが冷える可能性もあるため、この時点で火加減を1段階上げても良いでしょう(元のレバーの位置が「右から2/5」なら「中央」、「中央」なら「みぎから2/3」)。2ハゼが始まった後、火加減が強いようなら、また1段階下げます。
ピチピチとした金属のような音がしたら2ハゼの始まりです。音の間隔が数秒〜1秒に1回位に狭まってきたあたりから、秒数をカウントして仕上げます。
上記の手順で、うちのコンロでブラジル系の豆を煎った場合、20秒でハイローストとシティローストの中間、40秒煎るとフルシティーローストくらいの仕上がりになります。
豆の種類やその日の気温・湿度によっても違ってきますので、最初は少なめの秒数で試し、物足りなかったら徐々に増やすようにして、好みの焙煎に近づけていきましょう。
7. ザルに取り出して冷却
豆を好みのローストになるまで煎ったら、手際よく冷まします。
- ガスの火を止め、焙煎カゴの中の豆をうちわで少し扇ぐ(5秒位。省略可)。
- 右手で焙煎カゴのハンドルを持ち、角ザルの上へ移動。
- ネジを緩めて蓋を開けたら、再びネジを締めて蓋を固定(もし、ネジが空回りして蓋が開かない場合は、無理をせずカゴの外からうちわで扇いで冷ましましょう)。
- 右手でハンドル、左手で網の部分を持ち、ゆすって中の豆を振り出す(鉄板部分は軍手をしていても熱いので、必ず網の部分を持つこと)。
- うちわでチャフを飛ばしながら豆を冷ます。
- 貝殻豆(中身がないもの)など、状態が良くない豆を見つけたら取り除いておきます。
焙煎後のあれこれ
焙煎したての豆は味が不安定?
焙煎当日は、豆に二酸化炭素が多く含まれていて味が安定しないため、1〜3日経ったほうが美味しいのですが、いつも出来栄えが気になって焙煎直後に飲んでいます。これはこれで美味しいものです。
上述の『コーヒー「こつ」の科学』によると、豆が二酸化炭素で覆われているので湯が浸透しづらく、味が薄くなるそうです。
また、深煎りにした豆を焙煎直後に容器を密閉してしまうと、ローストした際の煙の臭いが豆に残りやすくなるようです。
なので、焙煎後1日くらいは容器の蓋を密閉せず、載せておくくらいにしておいた方が良いようです。
収納について
コンパクトに収納するには、五徳の上に漏斗を載せ、焙煎器はカゴを2本のアームの間に入れます(写真右上)。
おすすめのミル
電動ミルはボンマックというメーカーのものを使っています。もっと高い価格帯のカリタと同じような形をしていますが、性能は遜色なくとてもいい仕事をしてくれます。
粉受けがプラで使いづらいので、ステンレスの計量カップにしました(料理にも使えて便利です)。
静電気を取る裏ワザ
冬場は静電気が発生してカップついた豆の粉が取れにくいのですが、カップを水道の蛇口に載せると、アースのような効果があるのか静電気が幾分弱まります。